音楽指導の仕事をかなり長く続けて来ました。
その中でいろいろ考えることがあります。
昔が全てよくて、今がダメとは決して思わないが、なぜピアノレッスンに対する問題がこれだけ出てきてしまったのだろうか、と考えることはよくあります。
ヒマですか?
そんなことを考えるなら練習しろ、あるいはレッスンをしろ、と思われるかもしれません。
でも大事なことです。
子どもが根気がない、やめるかもしれないというが、親も根気がなくなってしまったのではないだろうか。
よく、キーボードでピアノを買わず、住宅事情は・あるいは経済的な問題はクリアできている人が
「うちの子、いつやめるかわからないから、楽器を買っても勿体ない」
と言います。
続くなら買う、確かにそうなのかもしれません。
実は、習い始めた私はしばらく、「トイピアノ(おもちゃのピアノ)」で練習をしていました。
ピアノが来たときのことは、こんな年になっても覚えています。
私がピアノをはじめたとき、母は、あるいは父は、今の私なんて全く想像していません。
両親ともに楽器を習った経験はありませんでした。(父は、姉妹たち、つまり叔母たちがピアノやヴァイオリンを習っていて、多少音楽的な環境ではあったかもしれない)
まぁ習っていたらピアノを買うのは当たり前で、そのために積立をしてくれていました。
音大の受験をするとき、父は手放しで喜んでくれたわけではありません。
むしろ、反対されました。
当時は女子で大学に行く人はお金持ちか優秀な人で、ただ、私が通っていたのはそこそこに進学校だったし、両親とも高等教育を受けていたから、大学か短大に進学するのは至極当たり前だと考えていました。父も、娘は大学か短大くらいには進学するんだろうとは考えていたようです。(私は英語と国語が好きで、特に国語は学年トップクラスの成績だったので、大学に行って教員になるか、英語が使える秘書にでもなればと思っていた)
音大を出て、ピアノを教える仕事を続けた私は、「意味があった」と言えるのかもしれませんが、高校まで続けたけれど、現在ピアノを弾くことはほとんどない妹にとって「無駄な習い事だった」なんて誰にも言えないのではないかと思うのです。
一時期、長女の習字について期待できない、ヘタだしマジメにお稽古しないし態度悪いし、とぼやいていた私に、母は「まだやって3年じゃない。もう少し大人になるまで待ったら?すぐやめるのってどうかと思うわよ」と言いました。
ああ、うちの親って、悟ってたんだ、と思った瞬間でした。
本人は「やめる」と言わずに続けて、現在はお稽古からは卒業していますが、少なくとも受験のときは「習字をやっていて賞を取った(そう、賞を取ったのです)」ことは身を助けました。
私、基本的に短気です。実物の「なかつかせんせい」を知っている方にはにわかに信じられないかもしれませんが、私結構イラチです。歩くのも速いから、「ああ、おばさん、じゃま!!そこの女子高生、広がるなっての!!」と、心の中で舌打ちしてます。
だけど習い事については、いつも「待ち」の姿勢が必要。ピアノだけではないです。
「いやがることを無理やりさせても」
という考え方もありますが、そんなん言っとったら仕事なんて別にやりたくないことばっかじゃないですか。「逃げない」ことも覚えんといかんのではないですか。
私も気をつけなきゃと思いますが、自分を子どもに投影しちゃいけないんです。私は練習キライで、バイエル途中でやめちゃったからうちの子も続かない、かどうかは分からない。きょうだいでも違います。長女は練習しない子(というか、練習の必要性がわからなかった)でしたが、次女は自分から練習にはいかないまでも、はじめたらいつまでも弾いているし(練習曲が終わったらプリキュアとか学校のピアニカの曲を弾いている)
習い事って、本来、1~2年やってわかるものじゃありません。
また例にだして申し訳ないんですが、私が好きなマンガに「ちはやふる」と言う作品があります。
すみれちゃんという後輩の女の子、カルタ初心者で、カッコイイ先輩がいるから、とちょっと不純な動機でカルタ部に入った子が、かるた会の原田先生という指導者の方にかるたについて「何年やってもわからないからやるんだ」といわれてきょと~んとするシーンがあります。
例はかるたですが、つきつめてやる(原田先生も本業はお医者さんですから、かるたを職業としてやっているわけではない)ってそういうことなんだな、と思うんです。
一生つきつめて出来るのは、ピアノもそうで、若いときは若いときなりの、年をとったらそれなりの、目標もあるし表現もある。50歳からはじめて、20代の子と同じようには弾けないかもしれないけど、70歳までやろうと思ったら20年もあるんじゃん、時間あるじゃんと思います。
習う前には、よく吟味する。
習い始めたら、「続くかどうか分からない」じゃなくて「5年は続けなさい」といってあげてください。私の父のように。
そして、一番つらいけど、待つ。小学校1年、6歳ではじめたら、最低中学卒業まで。(本人が死んでもやりたくない、やめると言った場合、ピアノがいやなのか先生がいやなのか別の理由で逃げてるのかは見定めであげてくださいね。でも大体中学でピアノを続ける子は、先生がいやってことはないし、レベルは様々でも楽しんで出来ると思います)