大抵の子どもがそうであるように、私は子どもの頃、ピアノの練習が好きではありませんでした。今思うと大変もったいないことですが。
そんな私が、初めて自分から練習したいと思った曲があります。三善晃さん作曲の『さいころのおどり』です。
おそらく小学校2,3年生だったと思いますが、この曲を知った衝撃は大きかったです。今まで弾いていた曲と全然違う!と思いました。新しいリズム、和音の響き、心の底をかき回すメロディでした。
この曲だけは誰にも言われることなく、自分で譜読みして練習しました。レッスンの曲ではなく、先生や家族はだれも聞いていませんでした。でも私は、この曲に出会って、世の中には良い曲もあるのだ、楽しいピアノもあるのだと知りました。ピアノを弾けるのは素敵なことだなと思うようになりました。
それから十数年経って、大学院の修了演奏に、なんとその三善晃さんが特別審査員として参加されました。その時頂いた講評用紙は今でも私の宝物です。
どんなにつまらなく思える練習曲にも、本当は、書いた人の意図と工夫と音楽が詰まっています。小学生の私に衝撃を与えてくれたこの曲は、いつ弾いてもやはり新しく、弾ける喜びを思い出させてくれます。
私が教える生徒たちにも、こんな曲に出会ってもらいたい。出会ったら思いきり楽しんで弾けるように指導したい。そう思っています。